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着なくなった服をほかの誰かへ。服の循環をつくりながら市原でアップサイクルにも取り組む

着なくなった服をほかの誰かへ。服の循環をつくりながら市原でアップサイクルにも取り組む

市原市(佐倉市→東京都→市原市:2021年~)
三和沙友里さん(energy closet 代表)

服を売らずに“循環”をつくるアパレルブランド「energy closet(エナジークローゼット)」の代表を務める三和沙友里さん。2021年から自身の拠点を市原市へ移し、小さな集落にある住居兼アトリエで制作活動にも打ち込んでいます。既成概念にとらわれず、自分の感覚を信じて進む沙友里さんのお話には、どんな場所でも自分らしく生きるヒントがありました。

“手放す”と“手に入れる”をつなぐ物々交換スタイルのサービス

energy closet市原店でも月に数回「CLOSETtoCLOSET (クロクロ)」を開催。県内だけでなく全国からファンが訪ねてくるそうです

子どもの頃から洋服が大好きだったという沙友里さん。けれど、新しい服はどんどん作られ、どんどん消費されていってしまう――。学生時代からフードロスやフラワーロスの問題に取り組んでいた沙友里さんは、その現実にもどかしさを感じていました。

「クローゼットはあふれかえっているのに着る服がないってよく耳にしますよね。そこにずっと違和感があって、手放すことと新しいものをゲットすることをセットにしたら、手放すことがもっとポジティブになるんじゃないかと思っていました。あとは、もともと私は古着の中でもボロボロのものが好きなんですが、東京の古着屋は状態の良いものが多いのでそういう服って意外と売ってないんです。じゃぁどこで手に入るんだろうと考えた時に、たぶんみんなのクローゼットの中に眠っているんじゃないかなって」

もう着ないけれど捨てられない洋服を、それを必要としているほかの誰かのもとへ――。たどり着いたのは、売る・買うという一方通行ではない、服の循環という新しいファッションのかたちでした。沙友里さんは、2019年に「energy closet」を立ち上げ、そのメインのサービスとして「CLOSETtoCLOSET(クロクロ)」をスタート。入場チケットを事前に購入して服を3着持参すれば、気に入ったものを3着持ち帰ることができるポップアップショップで、開催時にはさまざまな人から譲り受けた400着以上の服が並びます。渋谷を中心に全国各地でクロクロを開催し、その活動はさまざまなメディアで取り上げられるなど大きな注目を集めました。2023年には「いちはらSDGsアワード」で奨励賞を受賞しています。

加茂地区の古民家に住居兼アトリエを

「energy closet」が手がける「upHAND」の枯れない花。役目を終えた洋服もハンドメイドの力で生まれ変わらせています
  • 廃棄された洋服の繊維でできた収納ボックスと古着から作られた刺繍ワッペン
    廃棄された洋服の繊維でできた収納ボックスと古着から作られた刺繍ワッペン
  • キュートなキーホルダーなど取り入れやすい小物も多数
    キュートなキーホルダーなど取り入れやすい小物も多数

当初は東京都内に事務所を構えていましたが、手狭になり、新しい事務所を探すことに。そんな時に知ったのが、市原市の加茂地区で空き家と移住希望者のマッチング事業を行っている「開宅舎」でした。

「大学ではまちづくりを専攻していて、研究対象として市原市に関わったことがあったんですが、その時に知り合った方に相談したら『沙友里ちゃんならマッチするよ!』と開宅舎を紹介してくれたんです。その方の人を見る目を信頼していたので、じゃぁたぶん大丈夫だろうと(笑)。出身は佐倉市ですが、Iターンや移住という意識はなく、東京から遠くない場所ならいいかなくらいの気持ちでした」

開宅舎には、ひとりで住むこと、アトリエとしても使いたいということを事前に伝え、候補の物件を見せてもらうことになりましたが、なんとその2軒目を見て住むことを即決。

「前に住んでいた人の荷物が残っている何十年も放置された家でしたが、入った瞬間に自分だったらここをこういう風に使うだろうな、ここでご飯を食べるんだろうなとすごく暮らしがイメージできたんです」

運命の家との出会いもあり、2021年9月、沙友里さんは加茂地区へと移り住みます。

支えあいながら生きる集落での暮らし

「ひとり暮らしのおじいちゃんの病院の送り迎えを近所の人がしていたり、集落全体が家族のよう。そこに私が入って孫がひとり増えた感じですかね(笑)」

「内見の時に近所の人たちが『なんだなんだ?』と見に来ていて。その方々の顔を見た時に、直感で、人間関係も大丈夫そうだな、この人たちの仲間に入ってみたいなと思えたんです」

市原市の南部に位置する加茂地区は、のどかな里山の風景が広がる地域。沙友里さんが暮らすのは、その中でも8世帯ほどの小さな集落です。開宅舎が事前に沙友里さんの話をしていてくれたこともあり、地域の方々には温かく迎え入れてもらえ、引っ越してきた際には歓迎会も開いてもらったそうです! その後も近所の方から野菜をもらったり、一緒に竹を切りに行ってハンガーに加工したり。今ではすっかり集落の一員です。

「古いものが好きで、近所の方から要らないものをもらって磨いて使ったりしていたので、そういう部分で親近感を持ってくれたということはあるかもしれませんが、この集落はもともとおおらかな人ばかり。みんなで支えあって生きている地域なので、私に特別に目をかけてくれているというよりも、その仲間に入れてもらったという感覚ですね」

里山での暮らしは季節をより感じさせてくれる

  • 自宅のアトリエに並ぶたくさんの洋服やリメイク道具
    自宅のアトリエに並ぶたくさんの洋服やリメイク道具
  • リノベした室内。外には小さなかまど小屋もあるそうです
    リノベした室内。外には小さなかまど小屋もあるそうです

自宅兼アトリエは、推定築70~80年の木造平屋建て。東京でコンクリート造りのマンションで暮らしていた期間も長かった沙友里さん。その頃と比べれば真逆の暮らしといっても過言ではありませんが、ギャップはなかったのでしょうか?

「驚きながらも楽しんで順応していきました。冬の寒さにはびっくりしましたけど、こちらに来てから季節をより感じるようになりましたね。こういう時期だからこういう暮らし方をしたら体が馴染むぞとか、季節の野菜を食べると元気出るんだとか、そういうことがわかってきて、体調管理もしやすくなりました」

そんな沙友里さんの暮らしに佐倉市で暮らすお父様も感化され、週末に加茂地区にやって来るようになりました。今ではお父様も地区内に土地を借りて、ブルーベリー農園と小さなオートキャンプ場を始めたそうです。

服と人、人と人がつながる場所をつくり続ける

energy closet市原店。2025年9月には、市内に古家具・古道具を扱う「POST」も新たにオープン
  • 渋谷PARCOで展示した作品「理想の1着」はクリエイターとの共作
    渋谷PARCOで展示した作品「理想の1着」はクリエイターとの共作
  • 「upHAND」のリメイク古着。洋服に関する技術や知識は好きが高じて独学で吸収したそう
    「upHAND」のリメイク古着。洋服に関する技術や知識は好きが高じて独学で吸収したそう

2025年3月には、八幡宿駅から徒歩10分ほどの住宅街に「energy closet」の市原店をオープンしました。

「ポップアップでは短期間に割とたくさんの方が来てくれるので、お客さまと話せる時間も少なく、もっとのんびりした空間で洋服を選んでもらえたらという思いがありました。それに、私のことを受け入れてくれた市原のみなさんとも洋服を通じて触れ合える場があったらいいなと思っていたんです」

アトリエでもある自宅では、制作活動にもまい進中。クロクロで預かった服の中からそのままでは着られないものをアップサイクルするプロジェクト「upHAND(アップハンド)」にも力を注いでおり、リメイク古着や雑貨、アクセサリーなどを制作しています。

「価値がないと思われているものをより価値のあるものにアップサイクルしていくことは、もっともっと可能性があると思っていて、それがお洋服を救うことにもつながっていくと思うんです。ゴミと思われているものも、誰かにとってはゴミじゃない。それを証明し続けるためにも、私の目の届く範囲で、より深く、丁寧にこのブランドを続けていけたらと思っています」

本稿は、2026年1月の取材に基づいています。

着なくなった服をほかの誰かへ。服の循環をつくりながら市原でアップサイクルにも取り組む

プロフィール

市原市

三和 沙友里さん

職業 energy closet 代表
住居 古民家(賃貸)
支援制度利用 有(家の修繕)

相談窓口

移住に興味がある方は、県や市町村の移住相談窓口にお気軽にご相談ください。