当初は、ここで事業を始めるつもりはありませんでした。ただ、実際にこの土地に関わるようになるなかで、夏以外は人通りが少なくなり、街全体が少しずつ元気を失っていく様子に気づいたといいます。カリフォルニアにも負けないほどのビーチ、広い空、心地よい風。
「この土地には、もっと人を惹きつける力があるはずなのに——」
大木さんは、そんな“もったいなさ”を感じるようになっていきました。そこに重なったのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。
「飛行機が飛べなくなり、飛べるようになってからも貨物便ばかり。人命を預かる仕事に誇りを持ち、体調管理も含めて仕事に向き合ってきましたが、そのモチベーションが、あるときプツンと切れてしまったんです」
それをきっかけに、大木さんは「第2の人生」について考え始めます。そして縁あって出会ったのが、白里海岸近くの海沿いの土地でした。実はこの土地、明確な事業計画があったわけではなく、衝動的に購入したものだったそうです。購入した当初は、「こんなに広い土地をどう活かせばいいのか」と途方に暮れたと振り返ります。
「買った土地にぼうぜんと立ち尽くしていたら、声をかけてくれた方がいたんです。その方が、実はこの地域で市議会議員をされている方で。そこから、いろいろな人を紹介してもらい、人とのつながりが一気に広がっていきました」
移住者である自分を、温かく迎え入れてくれた地域の人たち。その出会いが、この土地の本当の魅力に気づくきっかけになりました。敷地内の一軒家は民泊として活用し、隣接する店舗については、当時すでにテナントが入っていたため、まずは“オーナー”という立場で関わることに。ここから、大木さんの人生、そしてこの土地の未来が、少しずつ動き始めていきます。