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国際線のパイロットから転身して大網白里へ。ビールを囲んで笑顔が生まれる場を目指して

国際線のパイロットから転身して大網白里へ。ビールを囲んで笑顔が生まれる場を目指して

大網白里市(佐倉市→東京都↔大網白里市:2019年~)
大木健太郎さん(Rusty Nest Oamishirasato 代表)

東京都心から約50km圏内の大網白里市は、外房の玄関口と呼ばれる街です。市の東部には九十九里浜の人気ビーチ・白里海岸が広がり、美しい白い砂浜となだらかな海岸線がどこまでも続いています。この風景に惹かれ、大網白里市に第2の拠点を持った大木さん。人々が集い、誰もが仲間になれる場所を作るため、夢の第一歩を踏み出しました。

カリフォルニアを彷彿させる白里海岸に惹かれ

白い砂浜が広がる白里海岸。夏は海水浴場としてにぎわいます

「白里海岸ってカリフォルニアビーチに似てるんです。こことカリフォルニアはほぼ同緯度にあって、太平洋を跨いで海岸線が同じようなかたちをしている。成田空港に到着するときにコックピットから見える白里海岸の風景が印象的で、いい場所だなと思っていました」

そう話すのは、東京と大網白里市で二拠点生活をしている大木健太郎さん。「Rusty Nest Oamishirasato」を立ち上げ、市内初となるクラフトビール醸造所「Rusty Nest Brewery」を中心に、カフェ&バー、RVパーク、コインランドリーなどを展開しています。長年、国際線のパイロットとして活躍していた大木さんは、体調を崩したことを機に自然のなかで心身を整えようと二拠点生活を始めました。第2の拠点にこの地を選んだのは、東京からのアクセスのよさと美しい海や空を有する環境。現在は月の半分を大網白里市で過ごしています。出身は千葉県佐倉市ですが、実は大網白里市にはほとんど来たことがなかったそうです。

「上空からは見ていましたが、実際に足を運んで海岸を見たときは感動しました。東京の近くにこんなに開放的な場所があるんだって。ここは空の抜け感もすごいんです。朝日も夕焼けも星空もすごくきれいで、その自然をすぐそばで感じられるのは本当に贅沢ですよね」

海沿いの土地を購入して第2の人生がスタート

テナントが空いたことを機に「Rusty Cafe & Bar」をオープン
  • アメリカンな雰囲気が漂う「Rusty Cafe & Bar」の店内
    アメリカンな雰囲気が漂う「Rusty Cafe & Bar」の店内
  • 店内の壁にはアメリカの操縦士訓練施設の卒業証書も
    店内の壁にはアメリカの操縦士訓練施設の卒業証書も

当初は、ここで事業を始めるつもりはありませんでした。ただ、実際にこの土地に関わるようになるなかで、夏以外は人通りが少なくなり、街全体が少しずつ元気を失っていく様子に気づいたといいます。カリフォルニアにも負けないほどのビーチ、広い空、心地よい風。
「この土地には、もっと人を惹きつける力があるはずなのに——」
大木さんは、そんな“もったいなさ”を感じるようになっていきました。そこに重なったのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。

「飛行機が飛べなくなり、飛べるようになってからも貨物便ばかり。人命を預かる仕事に誇りを持ち、体調管理も含めて仕事に向き合ってきましたが、そのモチベーションが、あるときプツンと切れてしまったんです」

それをきっかけに、大木さんは「第2の人生」について考え始めます。そして縁あって出会ったのが、白里海岸近くの海沿いの土地でした。実はこの土地、明確な事業計画があったわけではなく、衝動的に購入したものだったそうです。購入した当初は、「こんなに広い土地をどう活かせばいいのか」と途方に暮れたと振り返ります。

「買った土地にぼうぜんと立ち尽くしていたら、声をかけてくれた方がいたんです。その方が、実はこの地域で市議会議員をされている方で。そこから、いろいろな人を紹介してもらい、人とのつながりが一気に広がっていきました」

移住者である自分を、温かく迎え入れてくれた地域の人たち。その出会いが、この土地の本当の魅力に気づくきっかけになりました。敷地内の一軒家は民泊として活用し、隣接する店舗については、当時すでにテナントが入っていたため、まずは“オーナー”という立場で関わることに。ここから、大木さんの人生、そしてこの土地の未来が、少しずつ動き始めていきます。

元水産加工場を再生してブルワリーに

  • 水産加工場だった建物を活かした「Rusty Nest Brewery」。タップルームも計画中
    水産加工場だった建物を活かした「Rusty Nest Brewery」。タップルームも計画中
  • ブルワリーでビール談義に花を咲かせる大木さんと醸造士の蝦名さん
    ブルワリーでビール談義に花を咲かせる大木さんと醸造士の蝦名さん

「県道沿いにある元水産加工場の建物がずっと気になっていました。そんなときに縁あって所有者とつながり、『君になら託せる、やってみないか?』と言われたんです。初めて建物のなかに入ったときは錆びだらけの状態でしたが、不思議とここから何かが始まる予感がしたのを覚えています。そこから“Rusty Nest(錆びた巣)”という名前が生まれました」

水産加工場の面影を残すことが地域の再生につながるという思いもあり、建物の躯体は残すことに。この空間で何をしようかと考えたとき、頭に浮かんだのはビール醸造所でした。

「友人の友人が醸造士になりたいという夢を持っていたのと、私自身の原体験が大きなきっかけです。国際線の機長として初めてカリフォルニアに飛んだとき、太平洋上空は揺れがひどく、緊張が続くフライトでした。無事任務を終え、仲間と海辺で飲んだクラフトビール(IPA)のおいしさは一生忘れられません。あのときの乾杯の瞬間に感じた温かさや仲間とのつながり。ビールをきっかけにそういう心がつながる場を作れたらと思ったんです」

醸造士となる蝦名さんは懇意にしていた「銚子ビール」で修業をさせてもらえることになり、大木さん自身も品質管理のためビアジャッジの資格を取得しました。醸造設備はポートランドから輸入しましたが、通関で引っかかったり、電気設備が壊れていたりとトラブル三昧。建物が完成し、多くの難題を乗り越えて自社醸造を開始できたのは2025年7月のことです。

オクトーバーフェストなど地域を盛り上げるイベントも

黄金色に輝く「Rusty Nest IPA」。左は市のご当地グルメをおしゃれにアレンジした「イワシっころ」
  • 「Rusty Cafe & Bar」には愛犬と過ごせるスペースも
    「Rusty Cafe & Bar」には愛犬と過ごせるスペースも
  • ブルワリーの敷地にある、古い小屋を再生したコインランドリー
    ブルワリーの敷地にある、古い小屋を再生したコインランドリー

現在のラインナップは、正統派のIPAを目指した「Rusty Nest IPA」、アルコール度数を少し下げた「Rusty Nest Session IPA」、九十九里で人気の「The Rising Sun Coffee」とコラボした「Rusty Nest Coffee IPA」、地元産の小麦やホップを使った「OAMI WHITE」。市内の土産店などのほか、2024年にオープンした「Rusty Cafe & Bar」でも味わうことができます。

「Rusty Nestの“Nest”には、“大人のアジト”“人が集う居場所”という意味を込めていて、農家さんにお願いしてホップを作ってもらったり、地元企業と連携して商品を作ったりすること自体がすでに交流の場になっているんです。カフェやRVパーク、ランドリーも同じ発想で、地元の人も観光客も自然と混ざり合う空間を目指しています」

2025年10月には、「銚子ビール」や「九十九里ワイナリー」のほか、30名以上の地元有志の協力のもと、「Rusty Nest」主催のオクトーバーフェストを企画。残念ながら台風で中止になってしまいましたが、今後もさまざまなイベントを開催していきたいと大木さんは話します。

「イベントを通して、地元の方と観光客が一緒に乾杯したり、地域の事業者同士がつながったり。その小さな交流の積み重ねが地域に新しい風を吹き込んでいくと思うんです。夏以外の期間を盛り上げるためにも、継続してイベントをやっていけたらと思っています」

地域のハブのような存在を目指して

「人の温かさや縁に恵まれてここまで来れました」と話す大木さん。現在はパイロットを退職し、地域を盛り上げるためさまざまなことを企画中

パイロット時代から暮らしは一変しましたが、今は、海を眺めながらゆっくりコーヒーを飲むことから一日が始まる幸せを、日々噛みしめていると言います。

「やりたいことは全然違うものになったけれど、パイロットのときに学んだチャレンジングスピリットやCRM(クルー・リソース・マネージメント=チームメンバーの力を結集して業務遂行能力を向上させること)は、目標を見つけてその物事を達成するために取り組んでいる今につながっていると感じています」

「Rusty Nest」が原点となり、地域と人、海をつなぐハブのような存在になれたら…。その大きな夢のため、たくさんの人の協力を得ながら、大木さんは一歩ずつ前に進んでいます。

「私は最初から明確な計画があったわけではなく、この場所で何かできる気がするという直感からすべて始まりました。行動してみると思いがけない縁につながり、そこから新しい流れが生まれてきます。考えるよりまずやってみるというのがいいのではないでしょうか。そして、もしビールに興味があったり、私たちの思いに共感してくれる方がいればぜひ声をかけてください! この海辺から地域の未来を一緒に育てていけたらうれしいです」

本稿は、2025年11月の取材に基づいています。

国際線のパイロットから転身して大網白里へ。ビールを囲んで笑顔が生まれる場を目指して

プロフィール

大網白里市

大木 健太郎さん

職業 Rusty Nest Oamishirasato 代表
住居 分譲マンション(大網白里市)
地域交流 地元農家や主催イベントでの交流など
支援制度利用 有(大網白里市商工会主宰の「おおあみ創業塾」への参加など)

相談窓口

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