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生まれ故郷・銚子へのUターンで手に入れた心のゆとり

生まれ故郷・銚子へのUターンで手に入れた心のゆとり

銚子市(東京都→銚子市:2022年~)

宮﨑啓太さん(水産物仲買業・地域おこし協力隊)

関東の最東端に位置する銚子市は、日本有数の漁獲量を誇る漁業の町として、またキャベツなどの農業や、醤油づくりの盛んな町として有名です。また、犬吠埼や屏風ケ浦などの観光名所も多く、特に元旦には“日本一早い初日の出”を見るため多くの人が訪れます。そんな銚子に生まれ育ち、一度は東京で生活した後、故郷にUターン移住した宮﨑啓太さん。家業である水産関係の仕事のかたわら、地域おこし協力隊としても、自分らしさを発揮して充実した毎日を送っています。

Uターンの決め手はストレス、サーフィン、妻との出合い

国内屈指の水揚げ量を誇る銚子漁港

銚子市出身の宮﨑啓太さんは、大学進学を機に東京都多摩市での生活をスタート。卒業後は八王子市に本社を構えるモノづくり関連の会社でロボット事業に携わっていました。

「実は、学生時代に寿司店でアルバイトをしていた時、その店の常連さんが、“今度、うちの会社で新しくロボット事業を始めるから若い人材が欲しい”と僕に声をかけてくださって、その会社に就職したんです」

一時期は「卒業したら銚子に帰ろうかと地元のインフラ関連企業の内定ももらってはいた」宮﨑さんですが、ロボット事業への興味が勝り、八王子市の会社に就職。入社後は、ドローンや配膳ロボットなどの営業・修理を担当し、「車にロボットを積み込んであちこちを飛び回るような生活」を送っていたといいます。

港の近くには360度のパノラマが見渡せる「銚子ポートタワー」が立っています

そんな宮﨑さんの趣味はサーフィン。「学生時代にかじったことはありましたが、本格的にハマったのは社会人1年目。それからは毎週末、銚子に帰ってきてはサーフィン三昧の休日を過ごしていた」のだとか。

「当時は、金曜日に仕事が終わったらまず仮眠をして、夜中11時頃から車で移動。下道を走ると八王子市から銚子市まで約3時間半。そこから波に乗って、友人と遊んで、めいっぱい楽しんだ後、日曜日の夜に再び八王子市へ戻る生活。今思うと、ちょっと無理していたのかもしれません」

仕事でも移動が続き、週末もアクティブに動き回っていた宮﨑さん。自身では「仕事に対するストレスを感じたことはなかった」はずでしたが、あるとき急に体調が悪化。「この仕事を続けていくのは果たしてどうなんだろう?」と疑問を持つようになったといいます。

また、「ちょうどその頃、今の奥さんと出会ったんですが、彼女も銚子市の出身で、そのタイミングでUターンを考えるようになりました」と宮﨑さん。結局、「頭では平気な気がしていたけれど、先に体が悲鳴を上げた」という仕事でのストレス、趣味のサーフィンを思いきり楽しめる環境、銚子市出身の奥様との出合い、という3つが決め手になって、2022年に銚子市での新生活をスタートさせました。

仲買の仕事と趣味のサーフィンでメリハリのある毎日

4~5キロはあろうかという立派なヒラメを片手に
  • 銚子漁港は、マグロなどの大型魚を扱う第1卸売場、イワシやアジなどの小型魚を扱う第2卸売場、タイやヒラメなどの中型魚を扱う第3卸売場に分かれていて、宮﨑さんが買い付けをするのは主に第3卸売場です
    銚子漁港は、マグロなどの大型魚を扱う第1卸売場、イワシやアジなどの小型魚を扱う第2卸売場、タイやヒラメなどの中型魚を扱う第3卸売場に分かれていて、宮﨑さんが買い付けをするのは主に第3卸売場です
  • 「カネ八商店」の加工場。漁港で競り落とした魚をここに運び込み、手作業で梱包した後、各地の市場へと出荷します。宮﨑さんは「入札はライバルとの駆け引きもあるので、いまでもドキドキする」そう
    「カネ八商店」の加工場。漁港で競り落とした魚をここに運び込み、手作業で梱包した後、各地の市場へと出荷します。宮﨑さんは「入札はライバルとの駆け引きもあるので、いまでもドキドキする」そう

宮﨑さんの実家は創業70年を迎える「カネ八商店」。銚子漁港の目の前に加工場を構える仲買の会社です。現在、宮﨑さんは「カネ八商店」の一員として、毎朝のように銚子漁港で水揚げされた魚を買い付け、加工場で丁寧に梱包し、各地の市場への出荷作業を行っています。

「うちが主に扱っているのはキンメダイやタイ、ヒラメなど。出荷先は豊洲市場が多いですが、そのほかに関東近辺の市場とも取引があります。この仕事は朝が早いですし、銚子は土曜日にも水揚げがあるので、週休2日のサラリーマン時代とは生活がガラリと変わりましたが、今はメリハリのある毎日を楽しんでいます。なにせ、天候のせいで船が出せない日は仕事がありませんから、自由に使える時間は予想以上に増えました」

その“自由な時間”にはサーフィンに出かけるという宮﨑さん。よく訪れるのは「利根川を渡ってすぐのところにある茨城県の波崎海岸。あとは南に少し足を伸ばして九十九里浜」だそうで、「多い時には週に3~4回のペースで行くこともある」といいます。

新たに魚の加工・販売にもチャレンジ

大きなヒラメを見事な手さばきで五枚おろしにする宮﨑さん。魚の捌き方は「カネ八商店」の大黒柱でもある一つ年上のお兄さんから教わりました
  • 刺身や塩焼きがおすすめの『銚子水揚げ3種食べ比べセット』。スニーカーの箱から着想を得たというスタイリッシュな化粧箱に入れて届けます
    刺身や塩焼きがおすすめの『銚子水揚げ3種食べ比べセット』。スニーカーの箱から着想を得たというスタイリッシュな化粧箱に入れて届けます
  • 親潮と黒潮がぶつかる銚子沖はプランクトンが豊富で、キンメダイの脂乗りが抜群。そんな「銚子つりきんめ」を下処理した後、瞬間凍結した『金太郎』
    親潮と黒潮がぶつかる銚子沖はプランクトンが豊富で、キンメダイの脂乗りが抜群。そんな「銚子つりきんめ」を下処理した後、瞬間凍結した『金太郎』

宮﨑さんが「カネ八商店」の一員になってから取り組み始めたことの一つに、仕入れた魚の加工とECサイトを活用した自社商品の販売があります。

「これまでは市場相手の仲買だけを行ってきましたが、今や魚もネットで売買する時代。全国のお客様に直接、商品を届ける試みを始めたんです。イチオシ商品はマダイ、スズキ、ヒラメを瞬間冷凍した刺身用フィレ『銚子水揚げ3種食べ比べセット』。超音波を使って凍らせる特殊な冷凍庫のおかげで、魚の中の細胞を壊すことなく凍結が可能で、解凍してもドリップ(水分やタンパク質が含まれた組織液)が出ず、新鮮なままの美味しさを食卓に届けられます」

ほかに、ブランド魚「銚子つりきんめ」を瞬間冷凍した『金太郎』は、ふるさと納税の返礼品として人気。さらに、捌いてみないとわからない“マグロの焼け”(漁獲された時のストレスなどが原因で赤身が白くなり酸味が出ること。生食には不向き)を使った佃煮など、未利用魚を活用した商品開発にもチャレンジ。「ゆくゆくは、生魚が苦手な人でも食べられるツナ缶のような商品も作ってみたい」と夢は膨らみます。

スキルを活かして地域おこし協力隊としても活動中

地域おこし協力隊として市内の観光スポットやイベントの撮影を行う宮﨑さん。その腕前は地元企業からもPR動画の撮影オファーがくるほど

約10年の東京暮らしを経て銚子市に戻ってきた宮﨑さん。「東京の空気を知ってから改めてその良さに気づいた」という故郷のために、「少しでも力になれれば嬉しい」と、家業である水産関係の仕事のかたわら、地域おこし協力隊としても活動しています。

「銚子に戻って、“さて、何の仕事をしよう?”と考えていた時、知り合いが“市が地域おこし協力隊を募集しているよ”と教えてくれたんです。僕は東京に住民票があったので、応募資格は満たしていましたし、募集内容が市のPR活動(観光プロモーション)分野だったので、趣味でやっていた動画制作のスキルが活かせるかなと思って応募しました」

つい先日も、市が運営するSNS用に、漁の安全と豊漁を願う伝統行事「漕出式」を撮影してきたという宮﨑さん。「元々はサーフィンの上達のために始めた動画撮影ですが、自分の微々たるスキルでも、生まれ故郷に何かしら貢献できていると思うと喜ばしい」と充実感をにじませます。

人があたたかく自然豊かな銚子

  • 銚子の方言「DAPPEYO(だっぺよ=でしょう)」が目を引くTシャツは、仲買の組合でイベント用に作ったオリジナル
    銚子の方言「DAPPEYO(だっぺよ=でしょう)」が目を引くTシャツは、仲買の組合でイベント用に作ったオリジナル
  • 背中には犬吠埼灯台や“日本一早い初日の出”など、銚子のシンボルがプリントされています
    背中には犬吠埼灯台や“日本一早い初日の出”など、銚子のシンボルがプリントされています

宮﨑さんは銚子へのUターンについて、「仕事のストレスから解放され、好きなサーフィンにも行ける。私も妻も実家の近くで暮らすことができるので安心感も大きく、多方面で心にゆとりができました」と満足げ。さらに移住を検討している人に向けては、「銚子は人があたたかで自然も豊富。それに水産関係の会社は、どこも基本的には人手不足なので、仕事は何かしらあるはず。“ちょっと疲れたな”と思っても海を見ればそれだけで心が晴れるので、暮らすには悪くない場所だと思います」と力強いエールをくれました。

本稿は、2025年1月の取材に基づいています。

生まれ故郷・銚子へのUターンで手に入れた心のゆとり

プロフィール

銚子市

宮﨑 啓太さん

家族構成 夫婦
移住経験 銚子市→東京都→銚子市
職業 会社員→水産物仲買業・地域おこし協力隊
住居 賃貸アパート
支援制度利用

相談窓口

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