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香取で始めた無農薬・無化学肥料の野菜栽培

香取で始めた無農薬・無化学肥料の野菜栽培

香取市(東京都→長野県→香取市:2016年~)

保坂和仁さん(農業)・優子さん一家

香取神宮や“水郷の町・佐原”で有名な香取市で、少量多品目の野菜作りをしている保坂さん一家。元々、東京・三軒茶屋で飲食店を営んでいましたが、「安心安全な野菜が食べたい!」と一念発起し、農家に転身。
紆余曲折の末にたどり着いた香取市で、夫婦と一人娘、そして愛犬、愛猫とともに充実した時間を過ごしています。

東京の生活に疑問を抱き移住を決意

高台にある畑。写真左奥に見えるビニールハウスでは苗作りなどを行います
  • 出荷を待つダイコンたち。立派でみずみずしい!
    出荷を待つダイコンたち。立派でみずみずしい!
  • 人付き合いを通してリーズナブルに手に入れたというトラクター
    人付き合いを通してリーズナブルに手に入れたというトラクター

香取市で「農園和楽志(わがくし)」を営む保坂さんご夫妻は、長女・花さんの誕生をきっかけに移住を考えるようになりました。

当時、東京都世田谷区で「おでん屋和楽志」を切り盛りしていた和仁さん。「どうしても東京で子育てをするイメージが湧かなかったことと、このまま飲食店を続けて年齢を重ねていけるのかという疑問が生まれてしまった」ことから、「田舎に住んで農業をやろう!」と決意したそうです。その裏には、飲食業界で働くなかで抱いた「料理は素材に勝てない」という農産物への強い思いもありました。

「おでん屋和楽志」を閉め、東京を離れた保坂さんが、最初に移住したのは長野県安曇野市。山梨県甲府市出身の和仁さんが「若い頃から隣県の長野にはよく遊びに行っていて土地勘があった」ための選択でした。

「その頃は農業を絡めたゲストハウスをやろうと思っていた」という保坂さん。しかし、移住後に優子さんの体調が芳しくなくなり、安曇野での生活は短期間で終わりました。

香取市との出合いから就農へ

  • 一人娘の花さん(中央)と近所のお友達。まるで3姉妹のように仲良し
    一人娘の花さん(中央)と近所のお友達。まるで3姉妹のように仲良し
  • 佐原のマルシェで知り合ったという香取市地域おこし協力隊のプレハノフさん(左)と
    佐原のマルシェで知り合ったという香取市地域おこし協力隊のプレハノフさん(左)と

銚子市出身の優子さんが千葉県内の病院に通院することもあって、県内で移住先を探すことにした保坂さん。「まずは旅行がてら県内のあちこちを見て回った」とのことですが、なかなか「ここだ!」という土地には出合えずにいました。

そんな折、たまたま立ち寄ったのが香取市(旧・栗源町)にある「道の駅くりもと 紅小町の郷」。
「娘の花がなぜかそこの公園をいたく気に入って。どうせなら、もうここに決めてしまおう(笑)となりました」

場所が決まれば次は農地と家探し。ここから和仁さんの行動力がものをいいます。
「無農薬で野菜を作りたいと思っていたので、オーガニック関係のイベントやマルシェに出店している農家さんに教えを請いに行ったというか、“実は香取市で無農薬農業をやりたんですけど……”って聞いて回って。その流れで山武市で有機農業を実践している『三つ豆ファーム』さんと繋がりを持つことができたんです」

三つ豆ファームさんに紹介してもらった香取市と成田市の農家で研修に励んだ和仁さん。その縁で農地と家を紹介してもらうことができました。
「新規就農には原則、5反(約5000㎡)の農地が必要(現在は法改正され下限なし)ですが、3反分を師匠に紹介してもらい、残りの2反分は市役所に問い合わせて探してもらいました。最初は4ケ所ほどに畑を借りていましたが、最近ようやく畑を1ケ所にまとめることができて作業も楽になりました。家については、いつの間にかここに住む流れになっていて(笑)。10年ほど空き家だったものを自分たちでリフォームして暮らしています」

無農薬・無化学肥料で野菜を作る

  • ある日の「野菜セット」の中身。毎週どんな野菜が届くのかはお楽しみ
    ある日の「野菜セット」の中身。毎週どんな野菜が届くのかはお楽しみ
  • 収穫前のブロッコリー。葉っぱが大きくてビックリ!
    収穫前のブロッコリー。葉っぱが大きくてビックリ!

「自分たちの食卓に並ぶ野菜は、安心安全なものを365日、自給自足でまかないたい」という保坂さんご夫妻。「農園和楽志」では、無農薬・無化学肥料にこだわり、少量多品目の野菜作りを実践中。現在は年間を通じて約100種類の野菜を育てています。

販売は主に個人宅への配送。ほかに佐原にある惣菜店への出荷や、定期的に行われるマルシェにも出店しています。
「農業を始めた当初は、東京に暮らす人をメインターゲットに考えていましたが、佐原のマルシェへの出店を通して香取市の人にも知ってもらえたようで、最近は地元のお客様も増えています。地元の方は直接、車で野菜を取りにきてくれるので、段ボール代や送料がかからず、お互いに助かっています」

大学卒業後、サラリーマンや飲食店経営など、様々な仕事に就いてきた和仁さん。「農業はマニュアル化が難しいからこそ面白い」としみじみ。
「同じ畑の中でも土の状態は違いますし、師匠に聞けば何でも解決するわけでもありません。失敗した理由は分かっても成功した理由は分からないということも多々あります。なかなか自分に合格点が出せないところに、やりがいを感じます」

香取で手に入れた充実感

彩り豊かな朝食。優子さんは「常備菜を盛りつけただけ」と謙遜しますが、こんな朝食が待っているなら早起きだって辛くない!
  • 「農業を本気でやってみて千葉県の温暖な気候のありがたさが身にしみた」と和仁さん
    「農業を本気でやってみて千葉県の温暖な気候のありがたさが身にしみた」と和仁さん
  • 地元のお客さんには使い回しできるカゴに入れて野菜をお渡し。経費削減&エコな仕組み
    地元のお客さんには使い回しできるカゴに入れて野菜をお渡し。経費削減&エコな仕組み

そんな和仁さんに「移住してよかったことは?」と尋ねると、「皆から“肌つやが良くなった”といわれます」と意外な答え。
「飲食業の時は昼夜逆転の生活だったので、こっちに来て体調はすこぶるよくなりました。あと、今は仕事がとにかく楽しいので、休日という概念がなくなりました。毎日が充実しているんでしょうね」

一方、優子さんは「草や花、虫などで四季が感じられるのが嬉しい」とのこと。
「畑や田んぼの様子、聞こえてくる音、日々変わっていく葉の色など、季節の移り変わりを肌で感じながら子育てができるというのは、ある意味贅沢なことかもしれません。娘はダイコンの葉を見れば“これはダイコン”、ニンジンの葉を見れば“これはニンジン”というのがわかるんです。都会育ちの子どもは、スーパーで売られている野菜しか見たことがなく、葉っぱの違いなんて気にもしないかもしれませんが、私にとっては、そんな小さなことが喜びですね」

地域に溶け込む意識を忘れずに

和仁さんいわく「よく“子どもは最高の外交官”といいますが、まったくその通り。娘のおかげで地域の方との関係がスムーズに築けました」とのこと

最後に、移住・新規就農しようと考えている人へのアドバイスを聞くと、「やる気はもちろん、周囲とどれだけコミュニケーションがとれるかが大事」と和仁さん。
「自分のやりたいことだけをやるのではなく、やっぱり、その土地に溶け込んでいこうという意識が必要だと思うんです。消防団に入ったり地域の草刈りに参加しているうちに、思ってもみない人との繋がりができて、結果的に自分にとってプラスになることもあります。農業は1人でやっているように見えて、実はたくさんの人に助けてもらってできることですから、地域の人と手を取り合うことが大切です」

「東京にいた頃は、自分たちがこんな風に農業をやっている姿なんて想像もつきませんでした」と口をそろえる保坂さんご夫妻。移住して8年目、今やすっかり“香取の農家さん”のたたずまいの2人は、将来についてこう語ります。
「“安心安全な野菜を食べたい”という気持ちを忘れずに、地道に農業を続けていけたら十分。余裕ができたら、お客さんに収穫体験をしてもらう機会を提供できれば嬉しいです。

香取で始めた無農薬・無化学肥料の野菜栽培

プロフィール

香取市

保坂 和仁さん‧優子さん

家族構成 夫婦、娘1人
移住経験 東京都→長野県安曇野市→香取市
職業 飲食店経営→農業
住居 中古の一軒家
地域交流 消防団や地域の草刈りなどに参加
支援制度利用 有(国の就農支援金)

相談窓口

移住に興味がある方は、県や市町村の移住相談窓口にお気軽にご相談ください。