1. Top
  2. ちばの人
  3. 印西で育てた野菜を東京で販売!“ちょうどいい千葉”での暮らしを実践する若き生産者

ちばの人 INTERVIEW ちばの人 INTERVIEW

印西で育てた野菜を東京で販売!“ちょうどいい千葉”での暮らしを実践する若き生産者

印西で育てた野菜を東京で販売!“ちょうどいい千葉”での暮らしを実践する若き生産者

印西市(東京都→八街市→印西市:2021年~)

佐々木佑介さん(農業)

今やデータセンターが林立する印西市ですが、実は米や野菜などの農業も盛んで、県外市外から移り住んで就農する若者も多いとか。そのうちの1人、東京都出身の佐々木佑介さんは、日本各地の伝統野菜など、ちょっと変わった野菜を育てています。無農薬で野菜作りを行いながら、休日は大好きな鉄道に揺られて千葉の風景を愛でる――それが佐々木さんの“ちばらしい暮らし”です。

今、注目の印西で無農薬の野菜作り

約60アールの畑。手前はウリを数種類、奥ではオクラを栽培中。2025年からは隣接する地主さんの畑も合わせて約1ヘクタールの農地で野菜作りを行う予定
  • “ほったらかし農法”で栽培中のゴーヤ
    “ほったらかし農法”で栽培中のゴーヤ
  • ダイコンの種まき真っ最中の畑。ダイコンだけで10種類以上を育てます
    ダイコンの種まき真っ最中の畑。ダイコンだけで10種類以上を育てます

県北西部に位置する印西市は、千葉ニュータウンの拠点都市として、また国内外の企業のデータセンター集積地として知られる場所です。かつては、東洋経済新報社が毎年発表する「住みやすさランキング」で7年連続全国1位を獲得したこともあり、現在も子育て世代を中心に人口が増え続けています。さらに、大型商業施設が立ち並ぶ町の中心部から少し足を伸ばせば、森や里山が広がるのどかな風景があちこちに残されています。

そんな印西の森に囲まれた畑で野菜作りに取り組んでいるのが、「佐々木農園~そうぶファーム」の佐々木佑介さん。“ほったらかし農法”と銘打った無農薬栽培で、年間100種類近くの野菜を育てています。

東京都墨田区育ちの佐々木さんが農業に関心を持つようになったのは幼少期。「父の故郷である新潟県上越市で過ごした日々がきっかけだったかも」と振り返ります。

「父の実家に帰省すると、祖母から“お昼ご飯に使う野菜を裏の畑から採ってきて”なんて言われて手伝ったのが楽しくて。今でも山の斜面にあった畑の風景をよく覚えています。それと、僕が小学校6年生の頃、父が突然“将来は田舎暮らしがしたい!”と言い出しまして(笑)。当時の僕にとっては田舎でできる仕事=農業だったので、せっかくだから農業高校に行こうかみたいな感じで亀有にある都立農産高校に進学したんです」

その後、高校の先生の勧めもあり茨城県立農業大学校に進んだ佐々木さん。2年間の寮生活を送りながら農業を学ぶかたわら、ある活動に参加するようになったといいます。

『すみだ青空市ヤッチャバ』との出合いから就農へ

『すみだ青空市ヤッチャバ』の事務局スタッフと。千葉だけでなく静岡や山梨の生産者さんも出店中。地域のお客さんとの交流が盛んな活気ある産直市です

2010年にスタートした『すみだ青空市ヤッチャバ』(以下、ヤッチャバ)は、「食を介して人をつなぐ。人を介して地域をつなぐ。」をテーマに地域の食育に取り組む産直市です。現在は、墨田区の東武スカイツリーライン曳舟駅前で毎週土曜日に開催され、関東を中心に全国各地の生産者さんが出店し、新鮮な農産物などを販売しています。運営を担う事務局のメンバーのほとんどは平日に会社勤めなどをしながら活動に参加。出店している生産者さんも、商品の販売だけを目的にするのではなく、ヤッチャバを一つのコミュニティーとして育てる意識を共有しているのが特徴です。

佐々木さんは学生時代から、この活動にボランティアとして参加。そこで知り合った千葉県内の生産者さんとの縁で千葉で就農することになったといいます。

「最初は山武市で有機農業を実践している農家さんで修業をさせてもらい、まずは八街市で畑を借りて野菜作りを始めました。7年ほど八街にいましたが、その後、印西に空いている農地があることを聞きつけて拠点を移したのが2021年。今耕している畑は2024年から借りています。農業を始めるにあたって特に千葉にこだわりがあったわけではないですが、墨田区は元はといえば下総国の一部だったわけで、なんとなく千葉には昔から縁があったのかもしれません(笑)」

伝統野菜を含めて約100種類を栽培

ヤッチャバでの販売の様子。佐々木さんが扱うのは自身の育てた野菜と、ヤッチャバ仲間から委託された愛媛・広島の離島の加工品。同じテントの女性は、東京から長生郡に移住して養蜂を始めたという養蜂家の方です
  • 夏の人気商品だというオクラとエゴマ
    夏の人気商品だというオクラとエゴマ
  • 沖縄ではモーウイと呼ばれる赤毛ウリ
    沖縄ではモーウイと呼ばれる赤毛ウリ

就農して約10年、「ようやく安定した野菜作りができるようになった」と話す佐々木さん。現在は日本各地の伝統野菜を含め、1人で年間100種類近くの野菜を栽培しています。

「たとえばカブだけでも10種類以上。滋賀の日野菜カブ、長野の木曽紫、奈良の飛鳥あかねなど、様々な種類を育てています。なるべくお客さんが飽きないように、そして“普段はあまり食べたことのない野菜を売っている人”として覚えてもらいたくて種類が増えていきました」

育てた野菜の販売は、毎週出店しているヤッチャバや、月に2回ほど県南部の『大多喜ハーブガーデン』で開催される「あつまんべ市」などでの対面販売がメイン。

「伝統野菜や珍しい野菜は、店頭に置いておくだけでは、どうしても手に取られにくいので、お客さん1人1人に、“この野菜はどんな背景を持っているのか、どうやって食べたら美味しいのか”を説明できる環境が大切なんです」

ただし、「将来的には販売は人に任せて、自分は畑での作業に専念できる環境を整えたい」と佐々木さん。「僕は千葉が好きなので、なるべく長く千葉にいたいんです」と笑います。

休日は鉄道の旅で千葉を満喫

  • トレードマークの宮沢賢治Tシャツで
    トレードマークの宮沢賢治Tシャツで
  • クリーム色の花びらがかわいいオクラの花
    クリーム色の花びらがかわいいオクラの花

「千葉の風景が好き」と話す佐々木さんの“ちばらしい暮らし”のひとつに休日の鉄道旅があります。

「鉄道の旅は風景をじっくりと眺められるのがいいところ。千葉は鉄道でグルッと1周できますが、僕はもう何周かしています(笑)。特に好きなのは外房の勝浦・鵜原あたりから上総興津、鴨川の太海くらいまでの海沿いの風景。どことなく父の故郷の新潟上越の風景にも似ていて気に入っています」

また、千葉には個性豊かなローカル線が多いのも魅力の一つ。

聞けば、「つい先日も家族で千葉の鉄道旅を楽しんできた」そうで、「小湊鐵道と、いすみ鉄道を乗り継いで房総半島を横断するのは楽しかったですね。途中、足湯に浸かったり、運良くトロッコ列車にも乗れて大満足でした」と目を細めます。

さらに、まとまった休みが取れるとJRの「青春18きっぷ」を駆使して遠方にも足を伸ばすという佐々木さん。その動機を「自分が栽培している伝統野菜が、元々どんな環境で育ってきたのか見てみたい」と話します。

「土の状態や気温などを肌で直接感じることができると、自分のやり方に自信が持てたり、その後の栽培のヒントがもらえたり、得るものが大きいですね」

働くにも遊ぶのにもちょうどいい千葉

ユウガオの実を手に微笑む佐々木さん。実は、県内54市町村のうち、なんと53市町村を訪ねたことがあるという“千葉好き”な一面も

最後に佐々木さんに千葉の魅力を尋ねると、「東京との距離が近いうえに環境がいい。それに、色々なものにアクセスしやすい。たとえば海でも空港でも、思い立ったらすぐに行ける。働くにも遊ぶにもちょうどいい場所」と大絶賛。

加えて、移住就農に関しては「農業を始めるのも、1軒の店を構えて商売を始めるのも覚悟は同じ。しかも農産物は単価が安い。最初のうちは基本的に上手くいかないと思ってやるくらいのメンタルの強さを持って欲しい」とアドバイスをくれました。

現在、自身の畑以外に、多古町にある畑で墨田区の子どもたちに収穫体験をしてもらうプロジェクトも進行中だという佐々木さん。今後も千葉での暮らしが、さらに充実したものになるに違いありません。

印西で育てた野菜を東京で販売!“ちょうどいい千葉”での暮らしを実践する若き生産者

プロフィール

印西市

佐々木 佑介さん

移住経験 東京都→八街市→印西市
職業 農業

相談窓口

移住に興味がある方は、県や市町村の移住相談窓口にお気軽にご相談ください。